• Faculty of Arts / Art Award

まる
山野井 結菜
映像作品 5分07秒

作者自身の曽祖母「まる」との幼い頃からの思い出をモノローグで綴ったアニメーション作品である。近年になり認知症を患い、作者との記憶を失いつつある曽祖母への気持ちを残すべく、アニメーション作品として制作された。現在と過去の思い出とを、水彩絵具や色鉛筆といった淡い色彩のアナログ画材を駆使し、それぞれ表現技法を切り替えながら記憶のイメージを表現している。特筆すべきは近年の状況のシーンにおける空間表現、モチーフ描写の技法である。それは水彩絵の具で描いたイラストをスキャニングによりPCに取り込み、それを映像制作ソフトウエアを駆使して3次元レイヤー上に配置し、擬似的ながらも3D表現を試みている点である。一般的な3DCGのような硬質なマテリアルとは異なり、アナログ素材の持つ“あたたかさ”を保ちながら3次元空間を再現している。この点は、題材としている曽祖母への思いを自身のオリジナルの表現へと昇華させ、技法とコンセプトを見事にマッチさせた作品として高く評価できる秀作である。