• Faculty of Arts / Art Award

2270022_波多江真純_遠雷_01s

遠雷
波多江 真純 HATAE Masumi
造形芸術専攻日本画研究室
194cm×345.2cm
日本画・紙本彩色
雲肌麻紙、岩絵具、箔

波多江真純の作品「遠雷」は、赤い稲妻を伴い、白い馬が走る群像を3.5メートルの大画面に描いた作品である。作者は日頃から生物などの有機物から魅力ある形態を引き出し、デフォルメによる抽象表現を研究している。この作品も馬の形を借りて直感的な発想で造形を掴み直し、分解再構成を試み、対象が持つ塊としての重厚感、力強さを表現しているようである。群青をベースとした背景と再構成された白い馬、たてがみとも動きの残像とも取れる黒くなびく筆致、赤く細く画面を横切る稲妻は、岩絵具のざらついた質感とともに荒々しい表情をまとい、幾重にも重なる線と単純な色彩を用いる事で、力強く疾走する野生の馬を表現している。自然界に存在する物を二次元に落とし込むという絵画表現の根本に着目し、独自の抽象表現に繋げる作業は一朝一夕に完成できるものではなく、この作品で選び出された形態も、まだ検討の余地を残すものの、対象と真摯に対峙しようとする姿勢が伺われる魅力ある作品となった。修了制作「遠雷」は作者の若い感性を表出した作品であり、その研究成果は高く評価出来る。今作を独自の研究内容を湛えた秀作として高く評価する。