• Faculty of Arts / Art Award

Skullpture (Funeral Play)
篠藤 碧空
造形芸術専攻現代表現研究室
インスタレーション
ミクストメディア

 本作は針金で制作された様々な生物の骨格と、それを駆動させる機械を中心に構成されたインスタレーションである。様々な素材から構築された舞台の中に点在する骨格は、ダンスのような身振りや楽器を模したオブジェクトを演奏するような動作などを繰り返している。部屋全体を使用した大掛かりなインスタレーションでは、単管パイプを組み上げ、合計6体もの針金で精緻に作らせた生物を骨格を配置している。中には高さ2メートルを超える骨格もあり、モーターでぎこちなく動く様子は独特なユーモアをたたえている。作者は、4年前から一貫して、針金で骨格を模した作品を制作してきた。少しづつ、ブラッシュアップを重ねられた彫刻やインスタレーションは、修了制作として十分な規模と見応えを有している。精緻な針金の骨格とは対照的に、骨格などを動かす機械仕掛けは、あえて不恰好に手作業の痕跡が残されており、巻き尺などの制作道具もギアの錘として使用されている。
 舞台のようなインスタレーションの奥には、棺を思わせるコンクリートパネルによる簡易な箱が設置されており、その上には、作者の肖像写真が遺影のように展示されている。この修了作品で大学生活を終える作者は、学部、修士と多くの時間を過ごしてきた大学の空間ごと、自身の葬儀として作品化している。自身をタナトフォビアだと自称する作者なりに自身の死と生に正面から向かいあう姿勢を強く感じる。作者が作品の中で引用している「魂呼び(たまよび)」とは、死者の名前などを叫ぶことにより、死者を生き返らせることができるという日本の民間信仰でみられる儀式である。本作では、山中他界観に基づく祖霊信仰をもとに作者の故郷に向けて儀式が行われている。
 大掛かりな規模と長い時間をかけて手作業を積み重ねて作られた本作は、ぎこちなく動く骨格たちから感じるユーモア、自身の生死感に向き合い、それらの思考を鮮やかに形に落とし込む確かな造形力を体現する優れた作品である。