ララバイ・ラプソディー
井上 直哉
造形芸術専攻油絵B研究室
個別の絵画は最大2090×1630mmから最小45×45mmまで
麻布、ペン、水彩、油彩
井上直哉は、彼が「非現実的なもの」と呼ぶ、さまざまな童話や神話などに登場するドワーフや妖精に着想を得た独自のキャラクターたちが織りなす空想的世界観の中で、イメージの創起とその表現形式の在り方を問い直すアプローチを研究した。
研究作品《ララバイ・ラプソディ》は、最大2090×1630mmから最小45×45mmまでの大小様々の約70〜80枚の絵画が、壁面上に配置されるサイズ可変の一種の構成組作品である。井上は、絵本あるいは映像におけるシークエンスの在り方に関心を抱き、出発となる一枚の絵画から次々に移り変わっていく場面展開を、一連の組作品として制作している。その超自然主義的なファンタジーの中で、様々なキャラクターが自律的に行動していく様を作者自身が追いかけるかのように、井上は予め物語の全体の筋書きを立てずに、情景の移り変わりを連鎖的に一枚一枚の絵の中で描き紡いでいく。
一点透視図法に基づいたタブローという形式にもよらず、リニアな時間性を持った絵本という形式にもよらない、井上の創作手法と展示形式は、確かな造形的感性と膨大な仕事量に裏打ちされ、豊かなナラティブを獲得している。ファンタジーの可能性の拡張を試みる意欲的な取り組みとして評価される。