• Faculty of Arts / Art Award

2032003_猪川紗帆_デミ・パリュール「変様」_01S

デミ・パリュール「変様」
猪川 紗帆  IKAWA Saho
デザイン工芸学科金属造形分野
《ティアラ》H20×W20×D20(cm) 210g重
《ネックレス》H1×L30×W20(cm) 78g重
《イヤーフック・R》L12×W3×D3cm) 24g重
《イヤーフック・L》L8×W4×D3cm) 26g重
銀、銅、真鍮、アルミニウム、ステンレス、鉄、チタン

作者は日々の制作を通して、金属表面に起こる変化に独自の視点で美を見出し、ジュエリーの伝統的技法を用いて「デミ・パリュール」と呼ばれるティアラ・ネックレス・イヤーフック(イヤリング)からなる3種類のセットへと仕立てた。フレームにはシルバーを使用し、ミル打ちで仕上げた外観は一見するとクラシカルな印象であるが、本作品では通常であれば宝石がセットされる石枠の中に、宝石に見立てた様々な表情の金属板が石留めの技法ではめ込まれている。これらの金属板は一般的には汚れとして除去される対象である酸化皮膜や錆などの現象で着色されているが、金属の加工中に生じる一期一会の多様な色彩と、質感の豊かさに魅了された作者はこれらの現象を『金属に変化をもたらす3つの自然的要因「熱・水分・生物の体液」によって自由気ままに変貌した金属』と語り、独自の感性で錆の価値を再定義している。作者は制作するにあたり、ヨーロッパのアンティークジュエリーなどを研究し、これらの構造から着想を得て、ティアラやネックレスの石枠はフレームから取り外すことができる様になっている。外した石枠は付属品として用意された金具をつけることでブローチにもなる仕様となっており、手の込んだ仕掛けは見た目だけでなく遊び心のあるジュエリーとなっている。
 本作品は鉄や銅、真鍮、ステンレス、アルミニウム、チタンといった貴金属ではない金属板に生じた現象に価値を見出し、宝石のように価値の定まったものと同等に扱うことで、既存の価値観を享受するだけでなく、作者独自の価値観を伴っており、ジュエリーとしての完成度のみならず、コンテンポラリージュエリーとしての同時代性も備わった秀作である。