• Faculty of Arts / Art Award

nimen
中国 瑚白
デザイン工芸学科染織造形分野
『nimen 』
・1 – Extinct species(絶滅種) 1,000×1,000×60 mm
・2 – Corvus(烏) 900×900×60 mm
・3 – Ursus maritimus(白熊) 900×900×60 mm
・4 – Hyaenidae (ハイエナ) 900×900×60 mm
・5 – Rhopalocera (蝶) 606×606×60 mm
・6 – Hymenoptera (蜂) 606×606×60 mm
・7 – Flowers (花) 606×606×60 mm
(上記より1、2、3を資料館買上)
絹地、酸性染料、アクリル板、LEDライト、他

ローマ字で『nimen』と題された作品は、絹地にモチーフとしての動植物の描画がプリントされ、「堰だし技法」と呼ばれる蝋染で丁寧に染め分けられた「スカーフ」状の作品として布地パネルにピン留めされている。さらに、その画面より3センチほど浮かせた透明なアクリル板には、ミニルーターでモチーフが線刻されている。大小合わせて7点からなる作品群は全て正方形の矩形で、画面上部のアクリル板の木口にはテープ状のLEDライトが仕込んであり、染色された画面と重なるようにアクリルに彫られた白い線が浮かび上がり、この白い線が落とす黒いシャドーは色面と融合する。鑑賞者はハイブランドのショーウィンドウを覗き込むような高揚感に包まれながら7つのショートストーリー(「Extinct species(絶滅種)」 「Corvus(烏)」 「Ursus maritimus(白熊)」 「Hyaenidae(ハイエナ)」「Rhopalocera(蝶)」 「Hymenoptera(蜂)」 「Flowers(花)」)に誘われていく。
「スカーフ」は実際にファッションアイテムとしても使用できるクオリティーを兼ね備えているが、作者はあくまで「スカーフ」の矩形と物語的なモチーフの扱い方やその構図における伝統的な約束事に興味を持ち、自身の造形作品のコンテクストとして採り入れている。アクリル板に線刻された動植物の持つ一般的なイメージに対し、それらと相反する以外な一面が染色された画面が重なり合い、双方向に行き来する。
作者は、対象物を認識する時に、ともすればステレオタイプな見方に陥ってしまいがちな行為に疑問を抱き、物事の相反するイメージをそれぞれ表出させ、それらが互いに関係しながら『二面性』を映し出す世界、言い換えれば新たな発見や多角的なものの見方を示す装置として現したかったのかも知れない。
 以上、中国瑚白の卒業制作『nimen』は大小合わせて7点の作品群によるインスタレーションであるが、一点一点丁寧に時間をかけて作られた労作であり優れた作品である。