• Faculty of Arts / Art Award

1831212_徳永成美_雫_1


徳永 成美
美術学科油絵専攻
H250mm×W3640mm×D90mm
ガラス、木、LEDライト

卒業制作作品名「雫」はエングレービングを施したガラス板に側面発光LEDという厚み1mm程度の薄い発光体を組み合わせたインスタレーション作品である。学部2年生からガラスにこだわりを持ち続け、大学周辺の植物を脱色しガラスに挟み込み光に透かして葉脈を観察する作品など、植物やガラスの質感にこだわりを持ち続けてきた。もう1点の卒業制作「水鏡」でも多数の器とガラスを組み合わせ、水に見立てたガラスに植物や小動物の死骸などをエングレービングしたものを芸術学部棟と情報学部棟の間の茂みに密かに設置している。このようにガラスという素材にこだわり、ガラスが割れてできる特有の形をそのまま利用し、テーブルに突き刺さるように配置されたガラス片は、危うさを伴う緊張感があり、屋外に置かれた水面を想起させる水平の広がりに対して、垂直性の対比が意図されている。ガラスにエングレービングされたネガの線で植物や水滴、気泡、ホコリやチリなどが描かれているが、それらは例えば氷に封印された空間の断片が割れてしまいそうな危うさとともに、まるで雪溶けを待っているようなゆっくりとした時間を孕んでいるようにも感じられる。大学の茂みに隠れるように配置したり、本作品も空間に対してボリューム感がやや乏しいように感じられるが、作品を声高に主張するのではなく、場や空間に寄り添うように存在させたいという作者の思考が強く感じられる。また本作品のようにユニット化することで増殖性が可能であり、今後の活動も大いに期待される。