• Faculty of Arts / Art Award

木立を歩く / 伊東 優

木立を歩く
伊東 優 (いとう ゆたか)
美術学科 彫刻専攻
インスタレーション

伊東優は、「木立を歩く」「拝所(ウガンジュ)から零れる」「三庫理(サングーイ)から」の3点を修了作品として提出した。それらの作品はいずれも鉄を素材とし、自らの体験を基に彫刻作品によって空間を構成したものである。作品「木立を歩く」は、幼少期に森に入った時の体験から、木立の間から差し込む光や枝葉のゆらぎなどの自然現象を造形化し、記憶の中の森を作品化しようと試みた意欲作であり、溶断によって切り抜かれた板状の部分と、細い鉄棒を溶接によって整形した線状の部分とを繰り返すことによって、森の持つ空間性を創作している。他の2点「拝所(ウガンジュ)から零れる」、「三庫理(サングーイ)から」も、聖地として知られる沖縄の久高島と斎場御嶽を訪れた際の記憶を表現したものである。
 伊東の作品研究は、自然現象とアニミズム的な自然への信仰心を造形表現として成立させようとする実験性の高い研究であるため、研究の途中段階であることは否めない。しかし、木立や木漏れ日といった、これまでの彫刻では表現してこなかった自然のあり様の造形化に挑戦し、成果として彫刻作品として十分に成立する作品を作り上げたことは、大学院の研究作品として大変高く評価できる。また制作に対する真摯な姿勢から伊東優の将来性を確信するものである。