• Faculty of Arts / Art Award

Two Sounds
江田 ゆかり(栗谷 多恵)
造形芸術専攻 映像メディア造形研究室
映像作品 7分57秒
アニメーション

映像制作、ことアニメーション制作においては近年デジタル化が進み、生産効率は格段に向上している。そういった状況の中、本作を制作した江田ゆかりさんは、フリーハンドドローイングによる伝統的なフレーム・バイ・フレーム手法で作成されている。いわゆるコマ取りアニメーションである。描画素材としてパステル・色鉛筆を使用しており、約8分の映像作品ではあるが、総原画数は1000枚以上にも及ぶ。
バイオリンを練習している少年が、近くの屋敷に住む顔も分からない誰かの弾くピアノとのアンサンブルを行い、そして音楽を通じて交流を深めていく様子を丁寧に一枚一枚描かれている。そこにはデジタルでは表現が困難な微妙な“ゆらぎ”が表現されている。特に二人が音だけを通じてデュエットを行うシーンは、描画材の特性も相まって、作者が長らく研究をしてきた、“音の可視化〜アナログ素材のアニメーション表現”の見せ場とも言える。フレームとフレームの間に、その前後をオーバーラップさせたフレームを挿入していき、アナログ描画における“偶然のゆらぎ”と、フレーム・バイ・フレームの間に生まれる“時間のゆらぎ”によって、独自のアニメーション表現を確立している。アンチデジタルに拘ったこの作品は、技法研究とそれに合わせたストーリーの創作、コンテンツに合わせた音響制作などにより直接手に触れられるような“あたたかさ”を持った良質な作品に仕上がっている。