• Faculty of Arts / Art Award

「○ △ □」
平尾 祐里菜
造形芸術専攻 金属造形 研究室
□:H1000㎜×W500㎜×D200㎜
□ 銀,銅,鉄,金泥,漆喰塗りボード

△:H1000㎜×W500㎜×D200㎜
△ 銅,鉄,漆喰塗りボード

○:H1300㎜×W500㎜×D200㎜
○ 銀,銅,鉄,金箔漆喰塗りボード

平尾祐里奈は、学部の卒業制作の頃より、日本の故事成語をキーワードとして、それに関連した植物を構成した作品で制作発表してきた。修了制作は、江戸時代の禅僧、仙厓 義梵(せんがい ぎぼん)が描いた『○△□』と言う禅画を基に作者自身の解釈で植物を用いて造形した3作品で構成されている。□は迷い,とらわれた心を表すかたちの表現として江戸中期に花鳥画を描いた森蘭斉(もりらんさい)の『叭々鳥図(ははちょうず)』、△は精神統一,座禅をしている姿を表すかたちの表現として剣豪宮本武蔵が描いた枯木鳴鵙図(こぼくめいげきず )を、○は無(無限), 自己の心を映すかたちとして禅僧仙涯 義梵(せんがい ぎぼん)が描いた『円相(えんそう)』を模して植物の枝ぶりの参考とし、各作品のモチーフとなる花や実は、□が、夏をイメージした蔓科植物の朝顔とテイカカズラ、△が秋をイメージした柿とコナラ、○が冬から春をイメージした椿とシダレヤナギで表現している。
 モチーフとされた緑の葉は皮膜色、枯葉は皮膜色と硫化仕上げ、柿は煮色仕上げ、ツバキは緋銅仕上げ、シダレヤナギは緑青で仕上げている。
作者は、日本古来からの金属の着色方に加え、大学院入学時より探求してきた「皮膜色」(金属素材をオーブンなどで加熱、表現に即したオリジナルの酸化皮膜色を金属素材に施す手法)に成功し、よりリアルな写実作品へと進化させた。この着色方法を完成させるにあたっては、その加熱時の熱量と時間をコントロールすることに多くの試作を費やした。
 また、植物の幹の部分については、鍛造加工により成形された鉄素材を用いることで、卒業制作時の問題点であった構造物としての強度の問題点も解消した。
 作品の背景には、禅画が描かれた紙質に似せた漆喰仕上げの板を配置することで、モチーフの植物をより美しく際立たせ、見る者を静謐な禅の世界に誘う秀作に仕上げている。