立てば芍薬,座れば牡丹,歩く姿は百合の花
平尾 祐里菜 (ひらお ゆりな)
デザイン工芸学科金属造形分野
芍薬:H1750×W700×D250mmm
牡丹:H1950×W800×D800mmm
百合:H2050×W400×W400mm
銅、銀、鉄
鍛金、彫金
「立てば芍薬,座れば牡丹,歩く姿は百合の花」とは、美しい女性の容姿や立ち居振る舞いを花にたとえた言葉である。作者は、この言葉の意味合いから、芍薬、牡丹、百合の花をモチーフに女性の「理想美」を表現しようとした。
作者の解説によると、女性も花も、真の美しさ強さは、隠れた内面や内側から生じるエネルギーから生まれ出てくるものだと強く説いている。
3種の花は、それぞれの花が一番美しく見えるとされている視点の高さを意識し、通常見ることのない根の部分を含めて作り込むことで、花の姿を女性の立ち姿に変容させようとした。
花と葉の色は、銅の酸化皮膜の色で表現されている。電気炉の中に銅板を入れ、温度と時間のコントロールで色着けされる作者独自の技法で魅力的な固有色の表出に成功している。使用する板厚の選定も、多くの試作を重ね、最終的には板厚0.3ミリの薄板に至り、鍛金・彫金の技法により繊細な花と葉の表現を可能にした。根は、細い銅の丸棒とパイプを鍛造して繊細に作られているが、根の部分で立たせるため、要所に鉄材を使うことで3点での自立を可能にしている。 軽やかさと凛とした佇まいを創出した魅力ある作品に仕上がっている。
また、これまでの伝統的な着色技法にはない、作者独自の着色法も魅力的であり資料的価値が高いと判断した。