柔らかな午後
小倉 佳菜
日本画専攻
F150号
雲肌麻紙・水干絵具・岩絵具・胡粉・金属箔
小倉佳菜さんの卒業制作作品「柔らかな午後」は、本棚を背景に主人公が本を読む、日常的であり優雅で充実した時間を感じさせる情景を描いた作品である。
椅子に少しもたれかかり興味深いまなざしで分厚い本を読む人物には、作者の目線や物語のリアリティを感じ、机の上に積まれた本やティーカップの表現もそれらを引き立てている。また背景の本棚には、逆光の効果を巧みに使い、本が並べられている様子を縦や斜めのラインを使ってリズミカルに表現している。
箔を効果的に使い絵具を何度も重ねるなど、本人の目指す世界観の表現に至った。人物の形や洋服の表現に不安定さが感じられるが、画面の構成力や日本画材料を巧みに使うなど、作品名である「柔らかな午後」という空間がよく表現された情緒溢れる魅力的な作品となっている。