仕立屋筒井ひらひら図屏風
青木 聡子 (あおき さとこ)
H 3600 x W 1800 x D15mm
酸性染料、油性ペン
『仕立屋筒衣ひらひら図屏風』と名付けられた六曲一隻の扉風は淋派を思わせる大胆な構図の図柄と鮮やかな色彩が目に飛び込んで来る。本紙は白山紬を筒指と蝋染めによって緻密に染め分けされているのだが、驚く事に屏風の大縁の錫箔部分には本紙に染められた図が大胆に油性マジックで延長して描かれている事に気づく。伝統的な仕立ての重厚な屏風にポップな落書き風の柄をのせる事で新たな様式を追求したいと考えた作者の狙いは見事に結実した。題材にされた女性のスカートを模した蓮の葉の形には、それぞれに物語のある模様が描かれていて、作者の洒落た遊び心と非常に卓越したセンスを伺わせる。作者の言葉を借りれば、この屏風は「妄想のブランド”toko.”の仕立屋さんの内装の一部」という事で想定されたものであるが、独立したひとつの作品としての完成度や存在感も充分あり、「蓮は泥より出て、泥に染まらず」の言葉の通り、清々しく操とした秀作である。