• Faculty of Arts / Art Award

All behind the scenes
篠原 唯紀 (シノハラ ユキ)
デザイン工芸学科 視覚造形
ミクストメディア

 篠原唯紀の卒業制作は、牛一頭分の牛革からなるコスチュームが3セットと、それらをモデルが身に纏った写真6点からなる、「命を着る」というコンセプトの作品である。ディテールに目を向けると、衣服のパターンデザインには、皮革の持つ曲線などを取り入れているほか、バッグや靴に至るまで一つのスタイルとしてつくられていることに気づく。コスチュームの裏側には赤い肉の写真が印刷されており、この作品の素材としての皮革が、かつて一匹の牛の皮膚であったという事実を想起させる。しかし、作者は「あくまで女の子のファッションとして、かわいらしく」見えることを重視している。具体的には、肉というものの見た目の生々しさやグロテスクさに、作品のイメージが収斂することのないよう、パターンのプリント時に数ミリほどずらして2回プリントするなどして、その見え方を細かく調整する工夫を施している。
 ファッショナブルでかわいいものを身に纏うことが、かつて牛の皮膚であったものを身に纏うということに他ならないという事実を、かわいさやグロテスクさ、洗練さといった様々な感覚が絶妙なバランスで同居する、繊細な表現で提示することに成功したことを高く評価した。