飾暦72候
原 望美 (ハラ ノゾミ)
デザイン工芸学科 視覚造形
H 147 × W 208 × D 20 mm
包丁サイズ 桐箱 H 160 × W 230 × D50 mm
紙にデジタルオフセット、桐(箱)
原望美の卒業制作は、日本に存在する暦の「72候」という分類に注目し、制作したカレンダーである。細やかな時節の変化を表した暦の魅力を、対応する72のグラフィックで表現することにより現代の日常生活に再提示しようとするものである。
作品制作にあたっては、72の候名に含まれる言葉の意味や使われ方や、使われている言葉の相互関係、節季毎の特徴などについても、文献調査を中心に詳細な研究が行われている。また、そのグラフィック化に際しては、和菓子、家紋、着物のテキスタイル、花丸文様などに代表される伝統的な文様を中心とした日本における図像表現の調査に加え、京都などの和紙雑貨店での資料収集といった現地調査も行いながら、現代的なグラフィック表現と、古くから親しまれた図像表現の融合を模索している。こうした地道な過程に裏付けられた制作によって制作された72のグラフィックを通じて、候名に込められた時節の変化が、現代社会に生きる私たちにも、再び身近に感じ取れるようになった。
グラフィック表現は、実際にシルクスクリーンでベタ版を印刷してテクスチャの収集を行うことで、コンピュータを使用していながら、版刷りの様なテクスチャの質感を表現することを可能にした。また、印刷方法やグラフィックにあう印刷用紙の選定にも、細心の気配りが施されている。こうした徹底した情報収集・技術的研究を行うことによって、本作品が完成度の高い作品になったことを高く評価し、優秀賞とした