• Faculty of Arts / Art Award


平良 円 (タイラ マドカ)
美術学科 油絵専攻
H 1303 × W 1940 mm
パネル 綿布張り、エマルジョン地、油彩

 平良円の卒業制作は、親しい友人をモデルにして、「人間」の記憶と歴史の連関に自らが絵を描くことの意味を合わせ、その思いの中、単なる個人の肖像ではない人間全体のたゆたいの仮象をも描こうと目論んだものである。作者の意気込みとは裏腹に仮象を実在の画面に浮かび上げらせることには成功していない。しかし仮象を追い求める欲求は具体的に絵の具をどう置いて行くのかの客観的な判断の力を磨くことになった。一見、平凡で習作的な作品であるが、何回となく塗り重ねられた微妙な階調を持ち、本来の絵画そのものの不可思議さをかいま見せる秀作となった。