• Faculty of Arts / Art Award


増田 純 (マスダ ジュン)
芸術学研究科 造形芸術分野 現代表現
H 900 × W 700 mm 3点
インクジェットプリント、写真

 増田の「膜」は、2013年10月12日から11月30日まで開催したART BASE 百島(尾道市)の企画展「100のアイデア、あしたの島。-アートはより良い社会のために何ができるのか?」でのサイトスペシフィック・インスタレーションから発展したものである。本展は離島の特殊な環境でアートの役割や人間の生き方を再考するという企画内容であったが、増田は会場のコンテキストを見事に読み解き、長年使われる事の無かった空き家とそこに大量に残され廃物となった家具類で、高齢化、過疎化、高度経済成長期の物への執着を、大規模なサイトスペシフィックな作品として見事に現出させた(「人間の住処」2013年)。企画の内容に真摯に取り組んだ成果も秀逸であったが、空家を一軒丸ごと作品化した力量も優れていた。
 「膜」は、空き家から出た大量の家具類を透明なビニール膜でラッピングした上記インスタレーションのディティールに焦点を当てた写真作品である。抽象化された皮膜のイメージは、絵画的表現への新たな可能性が窺え、さらなる展開を模索する増田の前向きな姿勢は、芸術家に最も求められる資質を備えていると期待する。