逐電
佐藤 麗生 (サトウ レオ)
芸術学研究科 絵画研究分野 油絵
H 1818 x W 2273 mm 150号
パネル、画布、油絵
佐藤の制作は、単なるファンタジーとしての趣味生の発露だけではなく、作家自身とその制作の地縁性を掘り下げることで、一定の必然性を担保している。
佐藤は世代的に、好むに関わらず怪獣造形に親しみ、出身地の青森県は、異形や血縁にからむ奇談に溢れていた。それを現代絵画〜現代アートに昇華するのが、彼の目下の制作目標である。一見、描写には硬さを残し、ルネッサンス以来の遠近法的なパースペクティブを無視したものにも映るが、実際は彼の培ってきた描写技術、知識は高いレベルにあり、それはむしろ、ハイアート文脈以外の、例えば出身が同じで佐藤自身が影響を認めている成田亨の生堅さ、または知識が深い、映画の映像空間からのものであり、避けられないある種のチープさ、キッチュさも、彼とすれば多分に意識的な帰結なのであろう。
佐藤はとても狭い窓で世界を眺めていることは認めざるを得ないが、それを濃密な世界観の構築に変換し、将来的に絵画だけではない手段も使いながら、影響力のあるアーティストになり得る学生と期待する。