龍姫湖図 (リュウキコズ)
梅田 綾香 (ウメダ アヤカ)
デザイン工芸学科 染織造形
H 2750 x W 2750 mm
木綿、化学染料、プラチナ箔
『龍姫湖図』は広島県北の温井ダムに沈んだ村の民話を題材とし、その伝承と歴史を蝋染めの技法で表現した作品である。
龍姫湖という人造湖に沈む村には昔から「江の渕の大蛇物語」という民話があり、現在もなお語り継がれていている。その物語の大蛇は水神(龍神)であり、水と村人を守護するシンボルとして描かれている。
蝋染めで染められたパネル作品は、サイズが縦横275cm四方の迫力の有る大作であり、寺院の天井に描かれる“龍の図”を意識しながら円形の構図をとり、時の推移によって変わって行く村の姿を龍神の視点で丁寧に描く事で、過去から現在、そして未来の村への思いを馳せている。 また、染料の特徴を生かした透明感のある色彩や水に依る染料の動きを巧みに使い、湖面に映り出された主人公の龍姫と村の歴史を古井戸や望遠鏡を覗き込む様な視点で現わしたところもユニークであり、物語性を強調させている。
大画面でありながらも隅々まで手を抜かない作者の真摯な制作スタイルが反映された秀作である。