JIZAI
吉田 葉瑠日 (ヨシダ ハルヒ)
芸術学研究科 造形計画研究分野 金属造形
H 90 x W 300 x D 100 mm
鍛金、ロウ接
江戸時代から明治にかけて流行した自在金具(自在置物)がある。嘗て甲冑等を作っていた職人達が、本来の仕事の需要が減っていくなかで、持ち得る技術を自在金具といった新たな造形物(工芸)に活躍の場を求め競って制作したものである。これらの自在金具は、龍のような架空の動物や身近な動物(蛇、魚、蟹、海老等)がモチーフになっていることが多く、素材も鉄が主流であった。
吉田はモチーフとして日本にはいないアルマジロを選択し、その鎧を身に纏った様な特徴を自在金具の機構として巧みに取り込み、自在金具の伝統的な素材であった鉄を洋白(銅と亜鉛とニッケルの合金)に置き換え、また、造形面においてはディテールを抽象化することで、古来の自在金具の持つイメージとは異なる印象の作品に仕上げている。技法は鍛金技法を主としながら、ロウ接を駆使して理想の形を具現化している。主素材の洋白は合金素材特有の扱い辛い性格を持つが、試行錯誤の中で技術的困難を克服しているところも高く評価出来る点である。
作品「JIZAI」は、自在金具といった様式をとりながら、新たな時代性を感じさせる自在金具としての可能性と完成度を感じさせてくれる秀作である。
(胴体や関節を動かすことのできる。頭、胴体、尻尾、耳、指、爪の6ヶ所が動く。)