化石
南谷 知子(ミナミタニ サトコ)
美術学科 日本画専攻
H 1818 x W 2323 mm 150号
岩絵の具、和紙
題名の「化石」は言葉通りの意味ではなく、対象を存在や時間ごと平面に押し込める意識から出た言葉であると思われる。
確かに様々な視点で捉えられ、大画面に塗り込まれた無数の蓮の葉は、あるものは枯れ色の中で折りたたまれ、また、かたちも色彩も潰れ無彩色を施される物もあり化石の様相を呈してはいるが、目をこらすと強靭に立ち上がる蓮の実や茎の張りのあるかたち。また、瑞々しさをたたえた葉の柔らかな線を見ることができる。画面隅には小鳥が自然なかたちと緊張感とを伴って配されており、画面が単に平面的に構成されたのではなく、徹底した自然観察と自らの作画意識をもって作られた温度や湿度を感じる空間表現であることを物語っている。
日本画技法、材料研究とも確かなものがあり、完成度の高い秀作であると考える。