瞬き -春- -夏- -秋- -冬-
加藤 望(カトウ ノゾミ)
美術学科 油絵専攻
420 x 594 mm 4枚
銅版画(メゾチント)
作者の幼少期を題材に着想を得た『瞬き』と題されたこの4点の連作は、17世紀前半、オランダで発明されたメゾチント技法と呼ばれる銅版画の技法を用いた作品である。加藤はテーマを選ぶにあたり、自身が体験してきた個人的な記憶やノスタルジーの描写のみにとどまらず、四季の移り変わりによって自身の成長を表現することを主眼にして制作を行った。これは今回、この卒業制作とは別に並行して制作された1連の版画作品によっても明白であり、この試みは彼女自身が目標としている版画による絵本制作におけるストーリー性の構築と、幼少期の心理を振り返るといった今後における制作計画の展開とも深く関わっている。つまり本作品は加藤にとってただ単に一過性の作品としてではなく、自身の幼少期の体験と絡め、絵本制作のためのステップとなるよう計画された試みであったと言える。
こうした今後を見据えた長期にわたる展望の中で、本来膨大な時間と手間を要し、難易度が高いとされるこのメゾチント技法を用いて、卒業作品制作という限られた期間内において一定量以上の作業をこなし、密度を伴った画肌の獲得と今後の研究活動のための試みをなし得たことを評価の対象としたい。