憶い象り・想い彩る
杉浦 沙恵子(スギウラ サエコ)
芸術学研究科 絵画研究分野 日本画
F200号
日本画・紙本彩色
修了制作「憶い象り・想い彩る」はカウンターを中央に、ステンドグラスを背にした二人の女性と、無数に置かれたガラス器のなかで泳ぐ魚、その器に留るインコや梟たちを岩絵具の質感を生かし色彩豊かに描き込んでいる。画面構成は机上に座る女性のうつむいた表情を起点に右へと回遊しながら見る者の視線を誘導する。また、カウンター越しに溢れる光は同じ空間を共有しつつ、それぞれが交わる事の無い別々の時間の流れを瑞々しく演出している。共有される空間と孤立した世界、そこに等しく流れる時間の狭間を描出しているようである。それぞれの想いが浮遊し交錯する様を丹念に描き込んだ秀作である。技法研究に於いては絹本の裏彩色から着想したものを各所に用いている。薄い和紙を蜜蝋で半透明な状態にし、その裏から色箔や銀箔で彩色したものをコラージュし効果的に用いている。その効果もあってかレイヤーを重ねたような奥行きを感じる事の出来る作品となった。