• Faculty of Arts / Art Award

記憶に溺れる
濱元 祐佳(はまもと ゆか)
美術学科 油絵専攻
162.0×112.0㎝(P100号)
油彩 キャンバス

久し振りに実家に帰ると自分の居室だった部屋には、かつて両親に買い与えられたり、小遣いで求めた縫いぐるみ達がそのまま、ひっそりと置かれていた。愛玩と慰安の対象だったそれらから自らの気持ちが離れた寂しさを知ると同時に、縫いぐるみの一つ一つに当時の記憶が蘇る。
その記憶は、自分の過去を追体験させると共に家族の歴史を語る。
この作品は縫いぐるみに埋もれた、母と自分の似姿とも言える妹をモデルとして描くことで、多感な少女期を終える女性の惜別の感傷を表している。
3年生から取り組んで来たテーマを技術的な部分も含めて着実に進化させ、絶望や混沌から始まるそのテーマが仄かな希望を暗示させるに至った本作品は完成度の高いものとなった。
言葉に変えることの出来ない個人の感覚的な痛みと想いを、絵画表現に変換しようとする実直な試みと努力を高く評価した。