星落燦々図屏風
(せいらくさんさんずびょうぶ)
梅田 綾香(うめだ あやか)
芸術学研究科 造形計画研究分野 染織造形
W3642×H1842×D25 mm
四曲屏風
蝋染
綿サテン、反応染料
鮮やかな染料の色彩とモミジの大木に鹿をあしらった大胆な構図が印象的な『星落燦々図屏風』と名付けられた四曲一隻の蝋染の屏風は、宮島の弥山の原生林を舞台に繰り広げる生き物たちの輪廻転生図が描かれている。屏風の右側が現代に生きる鹿の番いで、不安定な足場ながらも自らの立ち位置を確かめるように現代の街並みを見下ろしている。そして、左側はそれらの前世のもので、深い森の一隅で精霊たちによって、鎮魂の儀式が執り行われている状況を表している。モミジの大木によって二つの場面、前世と現世が繋ぎ合わされ、森羅万象が連鎖しているように画面に配置されている。また、絵画における“異時同図法”を取り入れ、右画面から左画面への時間的・空間的な転換をモチーフの描き方や染め方の表現の違いを巧に使い分けながら表されていることに高度な力量を感じる。モミジの葉が青葉から紅葉し赤く染まり、流れ星のごとく聖なる場所に降り注ぎ消えていく宇宙の摂理を叙景的に描いているが、そこには生と死に対する畏敬の念や、作者自身もその自然の一部といった静かで強い想いが込められている。