• Faculty of Arts / Art Award

記憶に咲く花
清水 美於奈(シミズ ミオナ)

デザイン工芸学科 染織造形

H.600×W.4,000×D.4,000mm

ポリエステル布、アクリル糸/絞り染め

『記臆に咲く花』は、作者がこれまでの感謝の気持ちを込め、自らの記憶をプリントしたオーガンジーに絞り染めを行い、幾つもの花を象った造形作品である。自然光に照らされて咲く艶やかな色彩の花々が、無数の透ける波状花弁と球と皺とともに優しく語りかけてくる。「脳裏にある薄らではあるが鮮明な記憶を写真を通して想起した時に、私の知らない自分が見えてきた」という作者の言葉の通り、凝縮された記憶が内側から外側へと浮かんでは消え、別の繋がりをもって拡がっていく。それらの花々は、生まれてから今日までの様々な表情が映された写真(約500枚)を、軽く透ける光沢のあるオーガンジー(50m)にレイアウト及びプリントし、ビー玉(大中小)とワイヤーを用いて手で縫い絞った後に染色を行い、根から花へと繋がる造形を制作したものである。作者は、一貫して日本の伝統技術である絞り染めを探究し、素材及び絞り技術を新たに展開させたファッションやインスタレーションによる作品を発表してきた。本作品は、しなやかな感性、ユーモアのある構成力、美しさと耐久性を備えた素材、現代の印刷技術、新しい絞り技術が、極めて高度に融合した秀作である。