刻々と
小山 千尋(コヤマ チヒロ)
美術学科 日本画専攻
額装 227.3×181.8cm
日本画・紙本彩色
小山千尋さんの「刻々と」は日常の風景、夕刻の情景を作者の暖かい眼差しで描き上げた秀作である。空と家並みを画面上下で二分する大胆な構図は、密集した住宅街と見上げる空の開放感とを対比させた画面構成になっている。家並みは画面上で組み合わされ検討を重ねた配置で、日本画の絵具特有の複雑な色味と重厚感で描かれている。作者の持ち味である実直な筆致は一見拙いように感じるが十分な存在感と暖かさを持っている。そしてなによりこの作品の魅力は大きく開かれた空にあるだろう。刻一刻と姿を変える空は観るものを心の内へと向かわせる。この作品が持つ情景はいつか見た景色のように人の記憶や感覚に沿って立ち現れる。これまで風景制作に取り組んできた作者の集大成である。