• Faculty of Arts / Art Award

地の憶
岸本 祥太(キシモト ショウタ)

芸術学研究科 絵画研究分野 日本画

H2590mm×W1940mm

高知麻紙、岩絵具 / 紙本彩色

修了制作「地の憶」は、樹齢三百年の巨木を根元から見上げ取材したものである。縦長の画面には太く大きな幹が大半を占め、樹皮のゴツゴツとしたひび割れとともに地面に根を伸ばし長い年月を生きてきた様が描かれている。作者は自然の生み出す造形と真正面から対峙しその存在を感じ、それだけを表そうとしているように感じさせる。「人間の一生を遥かに凌ぐ年月を経た木肌には、この土地の長い歴史を記憶しながら成長しているように感じた。」と作者が述べているように、この老木の木肌を抑揚のない描線とともに岩絵具の質感を利用しながら鱗のように埋め尽くすことでそれらを表現している。小手先の絵作りに腐心することなく対象に向かう愚直な姿勢はある種の清々しさを感じさせる。表現方法にはなお一層の工夫が求められるが、重厚感、存在感を湛えた力作である。