• Faculty of Arts / Art Award

沈黙II
前田 葉月 
油絵専攻
P100号
キャンバス、油彩

画題は室内風景である。差し込むドアの灯りとベッドに放置された携帯電話から放たれた光を頼りに室内の様子が伺える図となっている。
前田 葉月は以前から抑制された光あるいは色彩により朧げに現れる身近な対象に興味を持ち、西洋絵画においてルネサンス以降、培われた透視図法と明暗法、あるいは質感表現を画材のコントロールとともに地道に実践、体得してきた。
油絵専攻の卒業制作において、あるいは美術界において発信される手法の中で最もオーソドックスな油絵技法を敢えて用い、効率を求めたコミュニケーションの果てに浮かび上がる社会的矛盾とそれに対峙する自己の葛藤の表出を試みた。
雑音を削ぎ落とし、声高に主張することなく「沈黙Ⅱ」と題された本作は対となる「沈黙Ⅰ」とともに無言で鑑賞者に語りかける秀作と認められる。