• Faculty of Arts / Art Award

1831301_大江里実_GIANT KILLING〈ゴリアテの肖像〉_3

GIANT KILLING〈ゴリアテの肖像〉
大江 里実
美術学科彫刻専攻
サイズ可変(大理石首像 H600×W560×D450㎜)
大理石、映像(MP4ファイル、2分35秒)

卒業制作「GIANT KILLING〈ゴリアテの肖像〉」は、大理石でつくられたゴリアテの首像彫刻とその像に作者自身が投石を行う映像によるインスタレーション作品で す。1年をかけて900㎏の大理石から彫り出した像に投石の破壊を加えることで、丹念 な造形、研磨と荒々しい痕跡を残す本作品は、投石する作者の映像を並列することにより鑑賞者につくる行為と壊す行為の境界の曖昧さを提示します。

作者である大江里実さんは学部2年次より旧約聖書に登場するゴリアテに関心を持って制作を展開してきました。
過去の同シリーズ作品には、塑造によってジェスモナイト成型された2.5mのゴリアテと3Dデータ出力で量産されたダヴィデの群像作品があり、古典的な手の跡の残る塑造と画一的な温度を感じさせるデータ出力それぞれの素材特性を活かした表現が試みられ、現代における正義の在り方を示唆するかのような印象を与えます。
また強大に描かれながらも敗者となるゴリアテの情けなさへの興味から始まったという大江さんの一連の作品では、ダヴィデ(勝者、正義)の持つ暴力性や、物語における善と悪の関係を探るような模索が彫刻制作を通して行われています。

本作品「GIANT KILLING〈ゴリアテの肖像〉」は大江さんにとって初めての石彫作品でありながら発想や造形に力強さが感じられます。
4年間を通じ意欲を持って取り組んできた素材実習と人体塑造で培われた感性と造形力の成果であると考え、誠実な作品制作に対する研究姿勢を高く評価します。