綴錦生命境膜図
(ツヅレニシキ イノチ キョウマクズ)
平濵 あかり (ヒラハマ アカリ)
芸術学研究科 造形計画研究分野 染織造形
H 1800 × W 1800mm
毛糸、綿糸、金糸、銀糸、酸性染料
綴織
『綴錦生命境膜図』は、祖父の霊魂への鎮魂の想いを込め、20代の死生観を、大胆な構図と鮮やかな色彩で表現した綴錦作品である。作品には、死、輪廻転生、多産、平和、人生の賛美、日本などのイメージが、頭蓋骨、鳩、羊、レモン、バラなどによって象徴的に表されている。作者は細い毛糸を美しい色彩(30色)に染め分け、一糸一糸を織り重ねながら、「生と死によって織り成された境膜が今という一瞬である」と想う。鑑賞者もまた、独特な織色によって艶やかに描かれた生命と死の象徴を、赤と黒の格子柄のレイヤーを通して体感することで、生と死の境界を行き来する。
作者は日本とフランスの伝統的な綴織の技術の上に立ちつつ、綴織の構造について真摯に立ち向かい、卓越した染織技術と豊かな感性によって、実像と虚像、純粋無垢な感性と危うさが入り混じった世界を繊細に表現し、荘厳な作品を完成させた。
本作品は、テーマ、構成、色彩、素材、染色技術、織技術が、見事に融合した秀作であり、デザイン工芸学科の第20回修了制作優秀賞に相応しい作品である。