• Faculty of Arts / Art Award

大いなる冬の日 / 鎌田 広樹

大いなる冬の日
鎌田 広樹(かまた ひろき)
芸術学研究科 造形計画研究分野 金属造形
金属素材含む立体作品14点
テキスト作品 25点
鉄/ステンレス/銅/真鍮/木/人造石

この作品は、北欧神話における世界の終末『ラグナロク』の中にある「ラグナロクの前に3年間、夏のない冬が続くとされた。」と言う、『大いなる冬』がメインモチーフとなっている。立体造形物とテキストを用いたインスタレーションを試みながら、世界の終末とその後のストーリーを鑑賞者の想像に委ね、リアルなストーリーを生み出させせようとしている。
作者は、卒業制作から修了制作まで一貫して立体造形物を用いたインスタレーションで物語や空想の世界を表現しようとしてきた。卒業制作においては、大型作品の単体で表現を試みたが、修了制作では14点の造形物と25点のテキストで構成し、よりストーリー性のある作品を目指した。数々の制作物、テキストは、鑑賞者に「世紀末」のイメージを誘発させるアイテムであり「世紀末」のある種の固定観念を植え付けるためのものではない。
 鉄材を主とした立体の造形物は、仕上げの処理に課題を残すが、鍛金・鍛造の技法と溶接を多用して手際良く組み立てられており、そのスピード感によって造形物に一種の統一感を与えている。一貫したテーマを、可能な限りの造形物と、吟味されたテキストを絡ませ、自身の集大成としての大作に結びつけた造形力、熱意は大いに評価できる。