THE・MOB
小田 普音 (おだ あまね)
デザイン工芸学科 映像メディア造形
7分00秒
アニメーション映像作品
この作品のタイトルは「THE・ MOB」(群衆・大衆)である。群衆とは言いながらも、それらは本来“個”の集合体であり、それら“個”に偶然が重なり集団を形成している。
とある街角で起きた、およそ30秒程度の時間の出来事を、マルチアングルで描き捉えたこのアニメーション作品は、様々なキャラクターたちの行動が絶妙に連鎖し、思わぬ展開を導く様を描いている。
一般的にドローイングアニメーションにおいては、フラットな空間性を用いて登場人物の展開する事象を表現する事が常となるが、作者はあえて困難とされる複雑な空間設定を表現に取り入れ、そこに居合わせた偶然の同時性として様々なキャラクターを登場させ、それらを独自のユニークな描画スタイルで描き分けユーモアとアイロニーに満ちた表現として見事に成功させている。
無秩序に集まった有象無象たちの軽妙な台詞回しは、現代の市民社会を反映させた世間的無関心(civil inattention)を描写しおり、シナリオライティングとしても秀逸である。困難とされる表現に挑戦し、小気味良いテンポで展開する映像と音像が相まって、作者、小田普音の映像センスが光るこのアニメーション作品を高く評価する。